ステップアップを目指す転職も

終身雇用制度は、日本独特の制度だと思われています。しかし、実際には戦後の高度成長期に生まれた新しい雇用形態なのです。明治の近代化以降国内の経済活動が活発化し、民間企業が多く誕生しました。この頃は、まだ終身雇用という概念はなかったようです。むしろ、現在の欧米諸国と同様、入社した会社で仕事を覚えて実力をつけたうえで独立して一旗揚げるという起業家の方が、圧倒的に多かったといわれています。それが、明治の近代化の大きなエネルギーになったそうです。
戦後の高度成長期には、大量生産と大量消費が製造業と小売業の急成長を促し、多くの企業が規模の拡大を図りました。その過程で大量の従業員を確保する必要に迫られ、社宅の整備など従業員向けの福利厚生システムが充実したのです。安定成長期を経てバブル経済が崩壊し、長いデフレの時代を経た現在、多くの企業が国際競争にさらされています。かつての終身雇用制度は崩壊し、柔軟な雇用システムが一般化しているのです。かつての男性中心の採用から、女性を積極的に登用する傾向が始まっています。特に、公官庁や大企業の場合、優秀な女性はむしろ希少価値が高く、売り手市場になりつつあります。
また、能力や実力を持つ人ほど、ステップアップを目的にした転職や起業が盛んになってきました。欧米に近づいてきたという人もいますが、実は明治の近代化の頃、私たちの先輩たちが持っていたチャレンジ精神を取り戻しつつあるというのが正確かもしれません。
今後は女性が持つ能力や実力が正しく評価され、そしてさらに活躍できる日本社会への変貌が期待されるのです。